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ジョナフェ・キャンプ感想文集

我らの時代に恐竜はいるのか  イ・ドンジェ

 喪失の時代といわれる、我々の生きているこの時代に、恐竜は果たしているのかいないのか考えてみる。科学館の展示物の中に、前足を奮い立たせながら、雄々しく吼え上げている恐竜の模型がある。中生代の中頃から末期の時代に、恐竜は皆、いなくなってしまった。氷河期が来て滅亡したという説もあり、あるいは、気候変動などの理由で食べ物が不足し、滅んだという説もある。とにかく今は、恐竜の姿を見ることはできない。巨大な体を、のっしのっしと震わせながら、柔和は目つきでゆっくりと歩いて来る、その時の純粋な姿を見てみたい。
この頃の俺は、そんな巨大な恐竜たちが、一斉に押し寄せて来るという幻想に、まま捕らわれている。原始時代のその姿で来るのではなく、顔に満面の怒りと殺気をみなぎらせて、まるでティラノザウルスのように、どっどっどっと破壊をもって向かって来るのだ。
抑圧と搾取を欲しいままにする大企業という恐竜。自分だけ安楽でいればそれでよいという利己主義恐竜。新しい氷河期を持って来る環境破壊恐竜。人々に混乱と無秩序とを押し付ける人間性破壊恐竜。
最近の恐竜は、こんな姿で近づいて来る。
私たちは一度、原始時代に戻る必要があろう。
これから夢を見る。素晴らしい夢の世界へと向けて遠い道のりを行く…。

1991年8月2日。私たち40匹の恐竜たちは潜水艦「忠光大学」号に乗って航海に出、中世代の「再生園」という地に到着した。そして、しばらくして遠い海の向こう、日本から来た恐竜たちと合流した。
高い山並みに包まれながら、ひっそりと建っている、家々のこじんまりとしたその姿が平和そのものだった。大空を見上げると、鳥たちが奔放に飛び交い、そして、ゆっくりと立ち昇って行った。蕨のような植物が垣根を作っているその姿は、まさに自由そのものだった。
連日、繰り返される原始生活に、後輩恐竜たちは疲れきり、文句を言い始めた。それもそうだ。これまで文明の恩恵にどっぷりと浸かって生きて来た者にとってみれば、いきなり原始人の生活にすっかりその身をさらして、さぁ、慣れるまで頑張れ、と言われ続けるのも苦しいことだろう。
私たちの体とは、とても比較にならない、非常に小さな石で築台を築きながら、作業を進めて行った。そして、何日か後には、「恐竜庁」から職員たちが来た。我ら恐竜たちが奉仕活動をする姿がめずらしいのか、その大きな体を引きずって作業をする姿が気の毒だったのかはわからないが、野望の年月から雰囲気ある男へと一瞬だけ演じてみせる気取りが出てきたのか、「まぁ、おいしいから飲んでみなさい。」とウォンビディを一瓶ずつ俺たちに買ってくれた。
8月8日。私たちはヘリコプターに乗って、美しい「鹿の国・恐竜園」(※国立小鹿島病院のこと)に飛んだ。準備が足りなかった関係(80余匹の恐竜たちを受容できる空間の不足)で、病院の内部までは入れなかったという。心残りではあったが、恐竜島の美しさと彼らの人生の歩みの歴史を一束、心に抱いて喜ばしい心で戻って来たようだった。
どんなに美しく、きれいな夢なのだろうか。恐竜たちがその大きな体に、真実、純粋、愛、平和、自由、等々をいっぱい詰め込んで世の中を見る時、ハンセン病快復者の方たちはどのように見えるのだろうか。
数多いキャンプ生活の間、快復者たちの視覚から彼らを理解しようとする真実の愛を、果たして俺は後輩たちに見せてあげられたのかどうか反省してみる。これからの私たちのキャンプは労働のキャンプではない、高度の精神的なキャンプにならなければならない。自分の心の中まで探求して行く真実のキャンプでなければならない。労働と愛と真実とが、だんだんに減って来ているこの頃のキャンプの現実に胸が痛む。

[イ・ドンジェ、1990年〜1992年、ジョナフェ・サークル誌]

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