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中国貴州省におけるハンセン病流行の現状
および予防・治療対策の研究

予防と治療についての対策

1.行政の措置

(1)管理体系の設立
各レベルの政府が先頭に立って、衛生、財政、民政、障害者連合会などの部門に省、地区、県の「ハンセン病予防・治療指導グループ」を共同で結成させ、統一的な指揮や、関連する各職能部門の調整を行う。それにより、各部門が緊密に協力し、業務を分担して各自職責を負うような、ハンセン病の総合的な予防・治療の管理体系を形成させる。

(2)長期計画の作成(短期計画)
各地区(州、市)、県(市、区、特区)の人民政府は、ハンセン病の予防と治療、変形障害予防およびリハビリテーションなどの業務を、その年度業務計画に組み入れ、関係各部門を組織し、各地のハンセン病の流行情況と変形障害リハビリテーションの需要情況に基づき、「ハンセン病総合防止治療プラン」または業務計画、年度計画などを作成し、任務を細分化しその責任を明確にする。また、その業務は年度審査範囲に組み入れる。

(3)省、地区、県の3つの地方行政レベルのハンセン病予防技術指導グループを設立し、職員の研修、技術指導、各業務の組織と実施、業績と効果の評価、および監督指導などの業務の責任を負う。政府が関連する計画および政策を制定するにあたり、技術的な提案を行う。

2.技術的措置

(1)新患者の発見をさらにすすめる
a.2005年〜2010年に、直近5年以内に基準に達するのが難しい37カ所のハンセン病高流行県はLECを実施する。50カ所の流行が比較的低いレベルの県については、重点とする郷・鎮や集落での患者発見業務を強化する。

b.病気の報告奨励金額を上げる
新患者を1例発見するにあたり、これまでは100人民元であった奨励金を200人民元に引さ上げる。一般市民からの報告や現場衛生職員による積極的な患者の発見を効果的に促し、発見効率を高める。

c.発見方法においては、省全体で、情報調査、家族検査(特に直近10年以内の新発見患者の家族)、病気発生地区の調査および皮膚科外来診療での検査業務を重点的に行わなくてはならない。疑いのある場合についての遺漏のない調査率は100%とする。直近10年以内の新発見患者の家族についての検査率は95%以上とする。直近10年以内に治癒した患者の再検査率は95%以上とする。3例以下の病気発生地区の患者宅の周囲5〜7戸についての検査率は95%以上とする。3例以上の病気発生地区の集落についての検査率は90%とする。

d.県レベル以上の機関には、2名以上のハンセン病予防専従の職員および検査職員を配置し、相応しい設備と試薬を配備する。患者に対して、最終的な診断、再発鑑定、治療の完了、治癒の判定を行うときは、皮膚組織液の菌検査を行うこととする。必要に応じて、組織病理検査を行うこととする。

(2)治療と経過覿察
現在実施されている多剤併用療法(MDT)プログラムは、薬品は世界保健機関(WHO)により無償で定量提供される。多菌型(MB)患者は24〜36カ月間連続して服用し、少菌型(PB)患者は6〜9カ月間連続して服用する。MDTの普及率は100%に到達させ、計画的治療率は95%以上であることとする。
MDTが完了した後、多菌型患者は10年、少菌型患者は5年の経過観察が必要である。経過観察期間は、患者全てに細菌学検査および臨床検査を毎年行い、経過観察率は90%以上とする。

(3)研修業務
全ての省の各地区、県のハンセン病予防の専門の中堅職員に対して、5年間に2回の研修を行い、ハンセン病診断、鑑別診断、各種薬品の反応の処理、および合併症や変形障害の予防とリハビリテーションなどについての業務水準と技能を向上させる。研修ならびに新しい知識の習得を行うことで、関係業務を担当できるようにし、業務の質および効率を向上させる。
郷と鎮の衛生職員、および郷や村における予防と保健関係の職員にハンセン病予防知識に関する研修を行い、情報提供、患者訪問指導および転院などの業務において重要な役割が発揮できるようにする。

(4)省全体で、新発見患者の神経機能の経過観察を推進し、神経炎を積極的に予防・治療する。
ハンセン病と診断を受けた患者に村して、MDTを実施すると同時に、専門職員は患者の神経機能の状態の検査や記録を毎月1回行う。MB患者には連続して2年間、PB患者には1年間の経過観察を行う。らい反応、急性神経炎、無痛性の神経炎が発見された場合、診断後1週間以内に標準的なホルモン治療を行う。6カ月以内に発生した神経損傷については、治癒率が50%以上であり、治療の有効率は80%以上である。

(5)変形障害リハビリテーション
変形障害のある患者全て、またはその家族に村して、自己看護や機能訓練などのリハビリテーションについての講習を行い、防護用品や補助用具を支給する。各種の続発性要因から生じる変形障害の悪化に村して予防の努力をする。
手術の適応症がある患者に対しては、変形障害の矯正手術を行う。

(6)ハンセン村を再構築し、ハンセン病リハビリテーションセンターを設立する。
現在ある50カ所のハンセン村の大部分は生存患者が30人以下であり、大半が危険な家屋である。さらに、ハンセン村の50%以上には、道路や水道、電気などが通っておらず、改善が非常に困難である。9カ所の地区(州、市)に、それぞれ相応しい場所(元もとの条件が比較的良好なハンセン村でもよい)にハンセン病リハビリセンターを設立することを提案する。具体的には、比較的小さいハンセン村を解体して合併し、患者をリハビリテーションセンターに集めて収容する。同時に、ハンセン村以外に存在する、家族による世話が受けられない障害がある高齢のハンセン病患者もリハビリテーションセンターに集め、統一的な管理、集団によるリハビリテーションを行う。自分で治療や処理ができない変形障害の患者、らい反応や神経炎患者については、リハビリテーションセンターにおいて、治療とリハビリテーションを短期間もしくは数回に分けて受けることができるようにする。

(7)国際や国内の協力プロジェクトを獲得する。
WHO、国際ハンセン病救済会、アメリカハンセン病協会、香港・マカオ・台湾の慈善団体、中国ハンセン病協会、中国身体障害者連合会など国内外の組織との連携を継続して強化し、患者の発見、変形障害の予防とリハビリテーション、職業訓練、ハンセン病村の建設、科学技術研究などにおいてプロジェクト協力を得て、先進的な技術および資金を導入して、貴州省のハンセン病予防・治療事業を促進させる。

(8)健康教育を強化し、ハンセン病予防の科学的一般知識を普及させる。
様々な広報手段を用いて、人々のハンセン病に対する恐怖と差別を減少させ、患者の懸念を取り除き、患者が自ら進んで専門的機関において受診できるようにする。そうすれば、早期診断や早期治療が実現し、変形障害が予防され、家庭や社会への伝染の危険が減少する。

(9)全国の予防・保健ネットワークを強化し、現場の衛生職員を十分に活用する。
各地の衛生行政の主管部門は、郷(鎮)、村の衛生職員のハンセン病予防治療業務における職責を明らかにし、年度計画に組み入れる。研修を通じて、ハンセン病の予防と治療に関する知識を理解し把握させ、ハンセン病の疑いのある情報、治療、訪問、転院、健康教育などにおいて充分にその役割を発揮させる。

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[著者:牟鴻江、柯偉、包夏、王穎(貴州省疾病予防コントロールセンター エイズ・性病・皮膚病予防治療研究所)、原典:日中医学(財団法人日中医学協会、2005年5月発行)、2008年12月30日]

※この記事は、日中医学協会の許諾を得て転載したものです。
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